音のない世界
2006年 09月 05日
風はゆるやかに流れていた
年老いた男女が
ベンチに座って子供達を眺めている
時のゆらめきまでもが
聞こえて来そうなほどの静寂だった
ふたりは静かに
手のひらで語り合っていた
喜び
共感
驚き
嘆き
悲しみ
せつなさ
いたわり
笑い声
すべて
二人にしかわからない言葉と
二人の間を行き来する表情たち
音のない言葉は輝いていた
二人の足元に
そっと老木の影が腕をのばす
光を支えるのはいつも
影なのだ
風はゆるやかに流れていた
2004/5/10
by kate_matsushima
| 2006-09-05 11:36
| 詩